被爆75年 8・6ヒロシマ宣言

 

 被爆75年を迎える直前の本年7月16日、米トランプ大統領は1945年
7月16日の原爆製造成功を称えて「アメリカは偉業を遂げ、核抑止力で世界の
利益に貢献してきた記念日だ」と述べ私たちを挑戦的な言動で怒らせました。核
兵器禁止条約発効を目前にして焦り妨害しようとするものです。
 本日、私たちは〝迫る核危機を乗り越えるためにヒロシマは何をなすべき
か″を考える機会を持ちました。
 INF失効後の米露の新たな核・ミサイル開発競争、イランとの核合意破棄、
2021年に期限が迫る米露の新START、核兵器実戦使用のための小型核
開発をはかる米トランプ政権の爆発を伴う核実験再開の示唆など、今核をめぐ
る危機的な状況が如何に高まっているのか。
 核廃絶のためには、このような複雑に動く内外の情勢の的確な把握が必要で
あること、沖縄における日米の軍事同盟の実態や世界の核情勢を第一線で取材
を進めている琉球新報の新垣記者から知識を共有し、オキナワ-ヒロシマ-ナ
ガサキが連帯して何をなすべきか考えあいました。
 米国をはじめとする核保有国や、日本など核抑止力に依存する国々は、国連で
の核兵器禁止条約採択に反対し、禁止条約の発効を何とか潰そうと躍起になっ
てきました。被爆国日本の政府は禁止条約に真っ向から反対するとともに核兵
器実戦使用を打ち出した米トランプ政権の「NPR:新しい核態勢の見直し」を
高く評価し、六ケ所村核燃料サイクルを動かそうとするなどプルトニウムのさ
らなる備蓄を伴うこの動きは、国際社会から不信を招いています。
 しかし、もはや「法的に禁止する」という国際的潮流を止めることはできず、
本年7月7日現在、核兵器禁止条約に81ヶ国が署名、そのうち40ヶ国が批准
するに至っています。
 ICANをはじめとする国際NGOの取り組みでここまで来ましたが、10
ヵ国をそこに加える戦いは終わっていません。また、核兵器関連企業への投資か
ら手を引くよう求める金融機関への取り組みにより世界の100近い金融機関
が2017年以降取引から撤退してきています。核兵器禁止条約の発効を連帯
の力で一層進めていく正念場です。
 INF全廃条約を失効させた米トランプ政権は、中国・露との対立を激化しア
ジアやヨーロッパへの地上配備型中距離ミサイルの配備を目指し動きだしました。本年5月には「領空開放(オープンスカイ)条約」からの脱退を実行しています。
 安倍政権は、日米軍事同盟強化の要として日本への地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備を秋田、山口両県に導入しようとしましたが、技術的な問題や地元の猛反対などから最近頓挫し撤回に追い込まれました。しかし、代りにNSC(国家安全保障会議)で、防衛大綱の見直しを図りミサイル防衛などの検討に加え、専守防衛を逸脱する危険な「敵基地攻撃能力」を保有するとの論議に入っています。
 新たな東西冷戦と言われる状況の中で、核戦争の危機が生み出されています。本年春のNPT(核不拡散条約)再検討会議は、世界を襲っている新型コロナウィルスの猛威で延期されましたが、NPTが課した「核軍縮の努力義務」はすでに崩壊してしまっている状態です。
 コロナウィルスによる犠牲は世界の弱者にのしかかり、それを尻目に巨額の税金を軍拡に投じる為政者たちは、同時に悲惨な貧困、放射能被害、ウィルス被害などあらゆる被害の真相を隠蔽し、切り捨てて来ています。
人類に敵対する違法なものとして核を明確に規定し、その開発、製造、実験、移転、威嚇などを禁止し、すべての核被害者への支援・環境汚染の除去などを規定する国際法―核兵器禁止条約―の発効こそが、核を葬る決定的な人道的理念・手段として緊急に求められています。
 <核と人類は共存できない>という歴史的現実から生まれた共通認識のもと、ヒロシマは連帯して巨大な核権力に立ち向かっていこうと世界に訴えます。

2020年・被爆75年8月6日
8・6国際対話集会~反核の夕べ2020 参加者一同

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